20代の半ば、初めて会社関係の葬儀に参列することになったとき、私は喪服こそ準備していたものの、バッグについては全くの無知でした。手持ちの黒いバッグといえば、就職活動で使った合皮のリクルートバッグか、休日に愛用しているゴールドのチェーンがついた小ぶりなショルダーバッグしかありませんでした。結局「黒ければ大丈夫だろう」と安易にリクルートバッグを選びましたが、いざ斎場に到着して驚きました。周囲の女性たちが手にしているバッグは、布製のしっとりとした質感で、金具が全く見えない上品なハンドバッグばかりだったのです。私のリクルートバッグは自立せず、中身を出す際にファスナーが「シャカシャカ」と安っぽい音を立て、厳かな静寂の中で非常に目立ってしまいました。さらに、就活バッグ特有の大きなサイズは狭い席では非常に邪魔になり、足元に置く際も収まりが悪く、自分の準備不足を痛感して顔が赤くなる思いでした。その日の帰り道、私はデパートのフォーマル売り場に直行しました。店員さんに相談しながら購入したのは、ホースヘアーを贅沢に使った、光沢のない布製のハンドバッグです。手に取ってみると驚くほど軽く、それでいて手に馴染む温かみがありました。金具は黒く塗装されており、被せの裏側にマグネットで固定される仕組みで、音も立ちません。そのバッグを手に持った瞬間、自分の背筋が自然と伸びるような感覚がありました。それ以来、急な訃報が届いても、このバッグを手に取ることで、心に1つの区切りをつけ、礼節を持って故人を送り出す準備ができるようになりました。マナーとは誰かに怒られないために守るものではなく、自分がその場に相応しい存在として静かに存在するための「鎧」であり「支え」なのだと学びました。若い頃は安価なもので済ませたいという気持ちも分かりますが、人生の重要な節目で使うものだからこそ、背伸びをしてでも本物を用意しておくことが、自分自身を守ることになるのだと、あの日の失敗は教えてくれました。
初めての葬儀参列で迷ったバッグ選びの失敗と学び