葬儀や法事の際に祭壇に灯されるろうそくですが、その色が場面によって異なることにお気づきでしょうか。一般的に、お通夜や告別式では「白いろうそく」が使われますが、四十九日を過ぎた後の法要、特に一周忌や三回忌といった年忌法要では「朱色(赤色)のろうそく」が用いられることがあります。この色の違いには、どのような意味が込められているのでしょうか。まず、葬儀で使われる白いろうそく。白という色は、古くから清浄、無垢、純粋さを象徴する色とされてきました。また、何にも染まっていない始まりの色という意味合いもあります。故人がこれから新たな世界へと旅立つにあたり、現世の穢れを払い、清らかな気持ちで出発してほしいという願いが、この白い色に込められています。ウェディングドレスが白であるように、人生の大きな節目において、白は特別な意味を持つ色なのです。一方、年忌法要などで用いられる朱色のろうそく。朱色、あるいは赤色は、仏教の世界では邪気を払い、場を清める神聖な色と考えられています。神社の鳥居が朱色であることからも、その特別さがうかがえます。また、日本では古くからお祝いの席で赤色が用いられるように、「おめでたい色」という認識もあります。葬儀という悲しみの場が過ぎ、故人が無事に四十九日の旅を終えて仏様の世界の一員となった後、つまり成仏した後の法要は、故人を偲ぶと同時に、故人が仏様になったことを祝う「おめでたい場」である、という考え方があるのです。そのため、故人の成仏を喜び、感謝を示す意味で、朱色のろうそくが灯されると言われています。もちろん、これは一つの解釈であり、宗派や地域、お寺の考え方によって様々です。浄土真宗では、亡くなるとすぐに仏になると考えられているため、葬儀の時から朱色のろうそくを用いることもあります。また、常に白いろうそくを使うべきだとする考え方もあります。大切なのは、色の違いにこだわりすぎることなく、その一本のろうそくの光に、故人への感謝と冥福を祈る心を込めることです。白いろうそくも朱色のろうそくも、その光が故人と私たちの心を繋ぐ架け橋であることに、何ら変わりはないのです。