ご家族が息を引き取られた直後、深い悲しみにくれる間もなく、ご遺族は様々な手続きに直面します。その中でも、最初期段階で絶対に用意しなければならない書類がいくつかあります。これらがなければ、その後の葬儀や火葬といった一連の流れを一切進めることができないため、その重要性を正しく理解しておくことが不可欠です。まず、何よりも優先して確保すべき書類が、医師から発行される「死亡診断書」または「死体検案書」です。病院で亡くなった場合は死亡診断書、ご自宅での突然死や事故死の場合は警察の検視を経て死体検案書が発行されます。これは、故人が法的に死亡したことを証明する唯一の公的書類です。A3サイズの用紙の左半分が死亡診断書、右半分が死亡届の用紙になっているのが一般的です。この書類の原本がなければ、役所で火葬許可証を受け取ることができず、火葬を行うことができません。また、生命保険の請求や年金の手続き、預貯金の名義変更など、葬儀後のあらゆる手続きでこの書類のコピーが必要となります。役所に原本を提出する前に、必ずコンビニなどで最低でも五枚、できれば十枚程度コピーを取っておくことを強くお勧めします。この一手間が、後の手続きの負担を劇的に軽減してくれます。次に用意すべきは、死亡届を役所に提出する「届出人の印鑑」です。届出人は、一般的に故人の親族が務めます。この印鑑は実印である必要はなく、認印で問題ありません。ただし、インク浸透印、いわゆるシャチハタは公的な届け出には使用できないため注意が必要です。葬儀社の担当者が死亡届の提出を代行してくれる場合が多いですが、その際にもこの印鑑が必要になります。また、葬儀社との打ち合わせや契約の際にも押印を求められることがあるため、常に携帯しておくとスムーズです。これらの書類と印鑑は、ご逝去後の手続きを進める上での「鍵」となるものです。深い悲しみの中で冷静な判断が難しい状況ですが、この二点だけは最優先で確保し、紛失しないよう厳重に管理することが、故人を滞りなく見送るための最初の、そして最も重要なステップとなるのです。
ご逝去直後にまず用意すべき手続き書類