現代の日本では、人が亡くなると火葬されるのが当たり前となっています。その割合は99.9%以上とも言われ、世界的に見ても極めて高い火葬率を誇ります。このため、多くの人が「日本では土葬は法律で禁止されている」と思い込んでいるかもしれません。しかし、驚くべきことに、日本の法律には土葬そのものを禁止する条文は存在しないのです。日本の埋葬に関する法律は「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」で定められています。この法律では、埋葬(土葬のこと)や火葬についての手続きは規定されていますが、「火葬でなければならない」とはどこにも書かれていません。つまり、法律上は、現代の日本でも土葬を行うことは可能なのです。では、なぜ私たちは土葬の光景をほとんど目にすることがないのでしょうか。その答えは、国の法律ではなく、各地方自治体が定める「条例」にあります。多くの市区町村では、公衆衛生上の観点や、墓地として利用できる土地の不足といった理由から、条例によって土葬を禁止、あるいは厳しく制限しています。例えば、「土葬は指定された区域でしか認めない」「新たに土葬のための墓地を作ることを許可しない」といった条例です。そのため、実際に土葬を行おうとしても、それを受け入れてくれる墓地を見つけることが、極めて困難なのが現実です。土葬を希望する場合は、まず自治体の条例で土葬が許可されているかを確認し、さらにその上で、土葬が可能な区画を持つ墓地を探し出し、契約しなければなりません。このハードルは非常に高く、結果として、法律上は可能でありながら、現実的にはほぼ不可能に近いというのが、現代日本における土葬の立ち位置と言えるでしょう。