祖母が亡くなったのは、私がまだ大学生だった冬のことでした。実家の一室に安置された祖母の周りには、ひっきりなしに弔問客が訪れ、家の中は悲しみと慌ただしさが入り混じった、不思議な空気に包まれていました。通夜の夜、父から「今夜は、おばあちゃんのそばについていてやってくれ」と言われ、私は弟と二人で「寝ずの番」をすることになりました。祭壇に灯された一本のろうそくと、細く立ち上る線香の煙。それだけが、暗い部屋の中で動いているものでした。正直なところ、最初は退屈で、眠気との戦いでした。しかし、静寂の中で、ゆらり、ゆらりと不規則に揺れるろうそくの炎をじっと見つめているうちに、私の心は不思議と落ち着いていきました。そして、その小さな光の揺らめきに導かれるように、祖母との思い出が次から次へと、鮮やかに蘇ってきたのです。幼い頃、熱を出した私の枕元で、一晩中手を握ってくれたこと。編み物が得意で、不格好なマフラーをたくさん編んでくれたこと。大学に合格した時、誰よりも喜んで、近所中に自慢して回っていたこと。炎が大きく揺れると、まるで祖母が笑っているように見え、小さくか細くなると、病に苦しんでいた最後の姿が重なりました。その揺らめきは、まるで祖母の呼吸そのもののようにも感じられました。弟と二人、どちらからともなく、祖母の思い出話をぽつりぽつりと始めました。弟が覚えていたのは、やんちゃをして叱られたことばかりでしたが、その話をする彼の目は、とても優しく潤んでいました。私たちは、ろうそくの火を絶やさないように、そして線香が短くなるたびに、新しいものに火を移しました。その単純な作業が、祖母のために何かをしてあげられているという、ささやかな実感を与えてくれました。夜が更け、東の空が白み始める頃、私の心は不思議なほどの静けさと、温かい気持ちで満たされていました。あのろうそくの番をした一夜は、私にとって、ただの儀式ではありませんでした。それは、祖母の死という現実から目をそらさず、その生涯に静かに思いを馳せ、自分の心の中で祖母との別れをきちんと受け入れるための、かけがえのない時間だったのです。あの夜のろうそくの炎の温かさを、私はきっと一生忘れないでしょう。
祖母を見守ったろうそくの夜